令和元年の11月頃より身の回りの整理も兼ねて、私の生きて来た昭和および平成時代で書き残して置きたいものを1冊に纏めてみようという気持ちが強くなり、翌令和2年の初め頃より、身近にある資料などを使って文章を書き始めていった。
そして、かなりの本数を書き上げるに至ったと思ったところ、令和3年3月、99歳3ヶ月にあと2日という13日に、母が亡くなるという不幸に見舞われた。
当初の昭・平時代の忘れ得ぬ事柄を書き残すという作業は中断し、母の最晩年の様子について、こちらを先に書いて遣りたい気持ちが強くなった。更に父のことも合わせて記し、私家版として1冊に纏め、発刊する方向へと気持ちが変わってきた。
しかし、父や母のことを1冊にするには、あまりにも知らないことが多く、分量的に容易ではない。そこで、私の拙い歌と随筆を第Ⅰ・Ⅱ章に、また心に残る温泉宿の様子を第Ⅴ章に纏め加えることで、この度出版する運びとなったのである。
特に自分の親の死に至る状況を私家版とはいえ、文字にすることには、恐らく賛否両論があるものと思う。しかし、体が不自由になった肉親を誰がどの様に介護をするかといった問題は、現代社会の大きなテーマでもある。私家版故に拙著を手にする人は少ないと思う。しかし、拙著が少しでもこの問題について考えるきっかけとなれば、著述した者にとって誠に幸いである。
勿論、著書は私の父・母を供養する目的だけで作ったものではありません。
私が現在触れることの出来る自然の営み、私の人生の過去から現在までに出会った人たちの思い出、私が見聞きした社会の出来事等についても書いている。
その点、広い読みものとして1読して頂き、ご意見などを賜われば、これほど嬉しいことはありません。